« 楡周平「『いいね!』が社会を破壊する」(新潮新書) | トップページ | マッコリの冬 »

2013年11月 3日 (日)

北折充隆「迷惑行為はなぜなくならないのか」(光文社新書)

 副題 「迷惑学」から見た日本社会

 名古屋大学の大学院で社会的迷惑行為の研究が行われてきた。その研究に携わり、現在金城学院大学の心理学の准教授である著者がその研究を継続している。それを「迷惑学」と称しているので、認知されるのはまだこれからになるだろう。

 「社会的迷惑」とは専門的に言うと「当該行為が、本人を取り巻く他者や集団・社会に対し、直接的または間接的に影響を及ぼし、多くの人が不快を感じるプロセス」と定義されるそうだ。

 社会的迷惑には
「明文化されたルールや法律に違反した行為」
「ルール化されていないが、他者に実害が及ぶ行為」
「実害はないが、他者に不快感を与える行為」
の三種類がある。それぞれの明確な仕分けはどうしても曖昧になる。主観的な要素が大きいし、時代や地域、文化によって迷惑かどうかが異なることが多いからだ。

 この本ではあえてそれぞれに分けて実例を数多く挙げながら具体的に説明していく。そしてなぜ迷惑行為をする人がいるのか、そして人はなぜそれを迷惑と感じるのか、それを心理学的に解釈しようと試みている。

 迷惑行為は社会的損失を招いているとも言える。一人一人では些細なことでも、野放しにすることはその行為の蔓延を招いてしまう恐れもある。「迷惑学」の究極の目標は迷惑行為をいかにして減少させられるか、という解答を求めていくことにあるだろう。

 この本でもいくつかの提案が述べられているが、「迷惑学」がまだ端緒にについたばかりのせいか残念ながら画期的な解答は見当たらない。

 迷惑行為をしない人間の方が大多数である。迷惑行為をする人が大多数ならそれは認知されていて迷惑行為とは見なされないだろうから当然である。中国のように行列に割り込む人が当たり前になれば誰もそれに目くじら立てなくなる。

 いけないことと承知しながら「列の後ろに並ぶのはいやだ」「うまいことやってやろう」と思って割り込む人間がいる。一人それがうまくいくとまねする輩が現れる。こうして数をたのんでいけないことがいけなくないことになることを期待する。「他の人もやっている」というのは常套句だ。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」だ。そういえば中国では赤信号も平気で渡っていた(今はだいぶ少なくなったけれど)。  

 たぶん「迷惑学」によって迷惑を減らすための解答は一般の良識ある人を対象にしていては永久に得られないであろう。このように迷惑のきっかけを作る人には、迷惑行為を禁止する言葉が一番届かないと言っていい。その最も届かない人に届かせるための画期的なアイデアこそが必要だろう。

 まだ生まれて間もない「迷惑学」だからこの本も突っ込み不足の感があるが、とてもユニークな研究であり、今後に期待したい。

 中国の、海外でひんしゅくを買っている一部の観光客にマナーを理解してもらうときなどに参考になるアイデアが出てきそうな気がする。

« 楡周平「『いいね!』が社会を破壊する」(新潮新書) | トップページ | マッコリの冬 »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/564886/58504689

この記事へのトラックバック一覧です: 北折充隆「迷惑行為はなぜなくならないのか」(光文社新書):

« 楡周平「『いいね!』が社会を破壊する」(新潮新書) | トップページ | マッコリの冬 »

最近のトラックバック

カテゴリー

  • アニメ・コミック
  • ウェブログ・ココログ関連
  • グルメ・クッキング
  • スポーツ
  • ニュース
  • パソコン・インターネット
  • 心と体
  • 文化・芸術
  • 旅行・地域
  • 日記・コラム・つぶやき
  • 映画・テレビ
  • 書籍・雑誌
  • 経済・政治・国際
  • 芸能・アイドル
  • 趣味
  • 音楽
2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ