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2016年7月 2日 (土)

平田オリザ「下り坂をそろそろと下る」(講談社現代新書)

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 副題が、あたらしい「この国のかたち」。ここから、司馬遼太郎の「坂の上の雲」や「この国のかたち」を連想するかも知れない。実際に引用もされている。坂を上る日本は、いま坂を下りつつある。その坂の下り方、このように下りて欲しいという思い、それに積極的に著者がどう関わって行動しているのか、そして彼の考える日本のあり方をまとめたものだ。

 人間が心身盛んな青年期、壮年期を過ぎれば、老境に到るように、いま日本はすでに下り坂を下りはじめているという認識は、私にもある。それは自分自身がそういう年齢だからそう感じるのかもしれない。

 しかし、だからおとなしく引っ込んでいろ、というということをこの本は訴えているわけではない。日本が坂の上り方を途中でまちがえたように、下り方をまちがえないようにするための考え方を提案しているのだ。

 内田樹師や藻谷浩介氏が帯に推薦文を載せている。これらの人たちや著者は、政治的な信条が私と違うところもあるけれど、その世の中を見る見方が独自のものがあって、なるほど、そういう考え方もあるのか、と教えてくれるところがある。そういう本は好きだ。

 著者は演劇を通して地方に文化を再興させようと尽力している。それはパフォーマンスとしての行動ではなく、確固たる信念と目的意識を持ってのことであることが、不思議なほど静かに諄々と語られている。えてして熱っぽく語ることよりも、静かに語られることでその内面の熱さを感じることが出来るものだ。たぶん彼が指導している青少年たちは、それを実感として受け取っているはずだ。 

 いくつかの論点があるが、少子高齢化についての考え方など、観念からの方策より、現実的な個別の人々の結婚の機会の創出についての具体的な提案が、あたりまえのことなのに目新しい。肝心のことが見失われているのかもしれない。待機児童の問題もそうだろう。

 嫌韓、嫌中について静かに批判している。多少蒙を啓かれた。ただ、彼の親しい韓国の人たちのような人ばかりだ良いのだけれど。

 彼が関わっている、小豆島、兵庫県の豊岡、四国の善通寺などを訪ねたくなった。彼の提唱する文化の再興に応える町は、どんな光を放っているだろうか。池内紀流の眼で眺めてみるのも面白い。

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