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2017年4月 4日 (火)

三橋貴明「中国不要論」(小学館新書)

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 中国が不要と言われても中国人は困るだろう。現に存在しているし、いなくなることもない。誰にとって不要なのか。もちろん日本にとって不要と言っているのである。

 しかし冒頭からの文章を読めば分かるように、著者は本気で中国が不要だなどと思っているわけではないし、それが言いたいわけではない。日本の経済にとって中国が重要であることは誰しも認めるところだが、多くの識者や経営陣が、日本は中国に大きく依存しているので中国との関係を悪くすると日本が大変なことになる、と言うことに対してこの本で反論しているのである。

 日本はそれほど中国に依存していて、中国の機嫌を損ねると立ちゆかなくなる状態であるのかどうか、それを検証し、それほど依存しているわけではないと主張する。GDPに占める対中国輸出依存度を見ると、台湾が15%以上、韓国が10%以上に対し、日本はドイツとほぼ近い3%以下である。万一中国にものが売れなくなってもGDPは3%しか低下しない。それどころか中国に売れているものは中国が工業生産に必要な生産財が多いので、困るのは却って中国ということになるだろう。

 著者が問題にしているのは、現実を見ずに中国に日本が大きく依存しているという信奉がまかり通っていることなのである。

 たしかに中国に大きく依存している業種や会社はあるだろう。それが全体のうちのごく一部であることを知らずに、産業界全体が依存しているとするプロパガンダに惑わされている、と警鐘を鳴らす。これが中国が意図的に行っていることではないかと言いたげだが、そこまでのことはないにしても、それを信じている人が多いことは問題であろう。

 実際には日本の対中国投資は減少している。中国に進出した企業は人件費の高騰で中国で生産するメリットを失いつつある。出来れば東南アジアなどに移転したいけれど、中国はさまざまな形でそれを妨害して進出企業を困らせていることは、良く聞かれることだ。その妨害の仕方そのものが中国式で、コスト以上のコストとして企業を苦しめてきた。中国進出などしなければ良かったと後悔している会社はとても多いだろう。

 私も在職時代に上司に当たる重役から指示されて、中国生産を想定した簡単な調査のために中国を歩いてそのレポートを提出したことがある。その重役は中国進出を進めたい意向だったから、それになるべく沿うように調べて、受け入れ可能の場所まで下話をして報告した。しかし本音は中国に進出するのはやめた方が良いと考えていた。

 すでに合弁などで進出している企業の現地責任者にたくさん会った。中国側の朝令暮改の法律変更やたかり体質の対応などの苦労をさんざん聞かされた。それに、もしその話が先に進めば、その交渉などのために現地に私が赴任する可能性がある。まだ男手ひとつで子どもを育てていたという家庭の事情もあり、それは勘弁してもらいたいと思っていた。

 さいわいトップの鶴の一声でその話はそれまでとなった。そのトップの判断は当時も正しいと思っていたけれど、今となるとその決断は高く評価したい。当時は早く中国に行かないとバスに乗り遅れる、と誰もが口にしていたからだ。そう口にする人間は中国に行って交渉責任者など引き受けるつもりなどない人間ばかりだった。現地で苦労している人がその苦労を報告すると、がんばれ、とか泣き言を言うな、もっとうまくやれ、などという答えばかりが返ってきてこちらの実情を聞いてくれない、見にも来ないと嘆かれたものだ。

 その同じ口だけの連中がいまだに中国は巨大市場だから、進出を是とするという思考から変わっていない。そういう風潮を著者は「中国不要」という言い方で正したいと考えているのだ。

 さらに後半では中国からの移民受け入れや、食料品の中国からの輸入について警鐘を鳴らす。食料品が中国製だと日本人は買うのに躊躇する。農薬入り毒餃子事件だけではなく中国の食品に対する不信感を助長する事件には数知れない。しかし不信感は強いのに食料品の輸入は減らないどころか増えている。一つはデフレなのに食品が値上がりしていることで、それを買わずにいられないこともあるが、多くは加工食品のかたちで輸入されているから中国製だと分からないのだ。

 今、中国との経済的な関係をどうすべきか、どうしてそう考えるのかを統計的な裏付けをもって分かりやすく説明している。テレビで見る著者の物言いにあまり好感を持てない人もいるだろう(私も多少そのきらいはある)。しかし意見の違うところもあるだろうが、中国に対しての見方が多少変わる可能性もあり、この本の内容は一度傾聴する値はあると思う。

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コメント

おはようございます
これは私の元同僚だった研究者から聞いた話なのですが、縫製工業の場合、中国からのシフト先として有望なのは、バングラデシュの他に意外にもあの北朝鮮だと言います。
何故なら、元々北朝鮮は労働者の質が高く、縫製工業も盛んだったので、移転先としては有望だと言います。しかも中国の三分の一のコストで同じものが作れると言いますからユニクロなどには移転先としては良いと言います。
まあ、条件としては北朝鮮の指導部、それも金正恩がどれだけ現実を認識するか、つまり日本に対して聞く耳を持つか?だそうです。それを考えればかなり難しいでしょうが・・・
では、
shinzei拝

shinzei様
ロシア極東部にたくさんの北朝鮮労働者が働いているそうです。
おっしゃるように勤勉でしかも低賃金なので重宝されているらしいですが、その賃金のほとんどが北朝鮮の当局が吸い上げていて、労働者は2~3割しか手にできないそうです。
そのお金がなにに使われているか考えると、今現在北朝鮮に進出するのはいくら経済的に得になってもすべきことではないように思います。

サードの配備を決めた韓国が、中国から露骨に嫌がらせを受けてます。
観光客が来なくなったり、不買運動が起きたり、
でも中国の報道官は、買うか買わないかは消費者が決めることと言い放ってます。
「話せばわかる」という国ではなく「話しても分からない」という国としての付き合い方が必要のようです。

けんこう館様
世の中、話しても分からない人がしばしばいてうんざりします。
中国にも韓国にも話せば分かる人がたくさんいるはずですが、その人達が口をつぐまざるを得ないのが本当に不幸なことだと思います。
日本にも話しても分からない人がいますが、増えているのでなければ良いのですが。

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