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2017年7月 6日 (木)

李真実(リ ジェンシー)『中国共産党の紅い金』(扶桑社新書)

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 著者は中国共産党の幹部まで経験している中国人だったが、「役人になれば人間になり難い、人間になりたければ役人にならない」という教訓にならい、生活を一変させるために日本に留学。その後日本の会社に勤め、2008年に日本に帰化したと著者紹介にある。この本は中国で定常化している腐敗の実態をいわば内部告発のように著したものだ。

 どこの国、どこの地域、どこの組織にも腐敗はある。古来根絶することは絶えてなかった。大小に関わらず、役割に伴う権益を自分の利益のために活かすのは人間の性のようなものか。しかしそれがごく限られた人間だけにとどまっていれば、ときに潤滑油のように働くこともあって、社会を劣化させるにはいたらない。

 それが権益を活かさないで自分の利益を拒否していると周りから迷惑がられるという社会は異常である。著者はそういう人間だったらしく、中国では生きにくかったのであろう。

 この本でつぎつぎに山のように暴露される中国の汚職と腐敗の数々は一つひとつならそんなこともあるだろう、と思えても、これほど定常化しているというのが事実なら、白蟻に蝕まれた住宅と同様、中国はかなり深刻な社会の劣化を来していると言わざるを得ない。

 もともと中国は歴史的にその傾向があったが、文化大革命以後、つまり鄧小平の改革開放以後はそれが恐るべき広がりと深さで定常化したと著者は述べている。誇張がないとは思わないが、たぶん実態と大きく違わないのだろう。他の情報でも同様な話は繰り返しつたえられている。そしてそれは共産党独裁体制そのものにも要因を大きくもつことも詳しく説明されている。共産党と云う存在そのものが巨大な権益であることは著者自らが体験したことでもあるからだ。

 この本は中国をこき下ろす本であるけれども、その腐敗の実態は想像を絶するのでそれを読んで呆れることを楽しめる。たいてい多少はすでに知っていることではあるが。さすがの中国人もこれでは中国で生きるのは大変である。

 特に農民工たちの受けているいわれのない差別はこれこそ差別だというようなものである。ここに搾取があることは中国民衆の不満の爆発の要因となりかねないものだから、その改善策が提案されているけれど、その搾取こそが権益であるから遅々として改善は進んでいないようだ。農民工は盲流と蔑視され、その子どもたちの多くが信じられないような生活を強いられている。あらためて義憤を感じる。

 この本の難を言えば、多少数字の桁を間違っている部分が気になる。91億ドルを約1京900兆円などという間違いは凄まじい。著者の間違いにしても出版社は何をチェックしているのか。他にも明らかな数字の桁の間違いがあって興ざめする。全体の信用を落とすので、注意して欲しいものだ。

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コメント

おはようございます。
先日は私のつたない政権予測を見ていただきありがとうございます。
中国の友人の話では、中国の歴代王朝は汚職では国力は弱くならなかったが、その後の農民の不満で弱体化し、外的要因(主に異民族の流入)で滅んできた、と言っています。
中華人民共和国もそのようにして滅ぶのでしょうか?
では、
shinzei拝

shinzei様
見かけ上の経済活動での利益が、ブラックホールに吸い込まれるように汚職で失われています。
汚職役人たちが滞留させている金が一定の割合を超えると経済活動時代が動脈硬化のように中国経済を蝕むことになるような気がします。
ましてや海外にその金が流出しているとなると事態は深刻です。
中国の外貨保有高は実際には統計よりずっと少ないのではないかとも見られています。

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