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2017年8月14日 (月)

内田武志・宮本常一編訳『菅江真澄遊覧記1』(東洋文庫64)

 東北地方などの海岸や峠で菅江真澄の石碑を何度か目にした覚えがある。どんな人なのだろうと思っていたが、数多くの日記体の紀行文を残していることを知り、一度は読んでみたいと思っていた。

 東洋文庫は本棚にけっこう並んでいるが、ほとんどが中国関係の本である。だから東洋文庫に菅江真澄の遊覧記が収められているのを知ったのは、百目鬼恭三郎の本で紹介されているのを見てからだ。あわてて東洋文庫の目録を確認したら全五巻で収められている。

 名古屋の大型書店や古本屋では端本しか見つけられなかったのでアマゾンで調べると、書店はばらばらではあるが全巻揃えられる。手配して入手し、先月末くらいから一日10頁くらいずつ楽しみながら読んだ。

 楽しめるけれど読みにくい。原文ではなく現代語訳されているので、読めることは読めるのだが、原文が擬古調のやまとことばにこだわって書かれていることと、やたらに歌(和歌)が散りばめられているせいかもしれない。なにより肝心なところにふりがながなかったりすると気持ちが治まらない。注も不要なところに詳しく、分からないところにはなかったりする。調べても分からなかったのか、当然知っているはずのことを私が知らないのか。

 それでも後半に入ると、それに慣れてきたせいか読み進む速度が上がってきた(ただ雑に読んだだけだが)。リズムがつかめた気がする。同じような時期に、同じように東北や北陸を歩き回った橘南𧮾の東遊記(東洋文庫では『東西遊記全二巻』に収められている)を比較のために読め始めているが、こちらは原文(正し現代仮名遣い)だが総ルビ付きで、原文なのに却って読みやすい。原文そのものが分かりやすいからかも知れない。こちらは日記体ではなく、項目別の小文を集めており、訪問先や時間順になっていない。旅で経験したり聞いた話、見たものを事項ごとに思いつくまま書き連ねてある。

 二つの紀行本を比較したかったのは、天明の大飢饉についての記述である。天明三年(1783)に始まり繰り返し全国を襲った飢饉は、特にみちのくに地獄の惨状をもたらした。

 あとで菅江真澄の遊覧記のその部分を一部紹介するつもりだが、彼は津軽まで歩き、そこから蝦夷地(北海道)に渡るつもりだったが、飢饉のために三年待つことになるのである。

 菅江真澄は三河地方(愛知県岡崎)出身らしく、もともと白井秀雄と名乗っていた。薬学者であり、医師であって国学にも傾倒して交遊した人は数多い。若い頃より各地を旅して歩いたが、31歳の時(天明四年)越後を経て奥羽地方へ旅立つ。そして75歳に秋田県の仙北郡で没するまで、ついに故郷へ戻ることがなかった。

 この本の冒頭は編訳者のひとり、内田武志による菅江真澄の伝記風の紹介である。内田武志は生涯を菅江真澄の研究にかけた人であり、血友病と闘いながらほとんど寝たきりのまま研究を続けた人だという(1980年死去)。名前を連ねている宮本常一は監修的な役割であったのかと思われる。

 菅江真澄は多量の文書を各地に残しており、紀行文も再三書き直している。それでも当然あるはずのものが欠けている部分があり、のちに発見されるものもあるので、研究は続けられているようだ。

 ここに挙げられている地名を元に、彼が訪ね歩いた神社や寺、旧跡をたどる旅がしてみたいと思っている。これから詳細をノートに作り直そうと思う。面白い。

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