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2017年8月10日 (木)

テレビ三昧(2)

 少し前のWOWOWドラマ『山のトムさん』。原作は石井桃子、あの名作『のんちゃん雲に乗る』の作者だ。映画化されたときの主役は鰐淵晴子。子どものときに見たので詳しいことは覚えていないが、母親役は原節子だった。『山のトムさん』のトムさんとは猫のことである。作者と覚しき主人公ハナ(小林聡美)は東京暮らしをやめて、娘と二人で田舎暮らししている友人(市川実日子)の元で暮らし始めている。そこにハナの甥のアキラが加わり、四人の暮らしが淡々と描かれていく。

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 あの『パンとスープと猫日和』のスタッフと出演者が作ったドラマであり、脚本が群ようこ、音楽が大貫妙子であるからその雰囲気が分かろうというものだ。盛り上がりはほとんどない。そのふんわりとした世界を楽しむか、何だこれは!と思うか、評価は人によって大きく別れるだろう。私は猫が好きだし小林聡美が好きだから自然体の演技を見ているだけで気持ちが好くて癒やされた。

 台詞も観客に聞かせるような気配を完全に絶ち、ただ普通に暮らしているなかでの会話になっている。市川実日子のクールなやさしさが見るたびに好きになっていく。もたいまさこが田舎の雑貨屋の女店主で出演しているが、いてもいなくても好い存在を、楽しそうに演じている。この人が空や彼方の山をぼんやり見つめる立ち姿が好い。

 ほとんどなにも事件らしい事件が起きない(アキラが面倒を見ているヤギが逃げたして、近所の畑を荒らすという事件はあるが、それもそういうことがあったというだけであり、激怒したというその人達は登場しない)ドラマの極地の作品だった。田舎暮らしに対するあこがれはあるが、自分のペースで生きられるとはいえ、生き物相手であるからサボることが許されない日常を引き受けるのは、怠け者の自分には無理かなあ、などと思う。

 そういえば、彼女たちの暮らしを取材にきた女性記者が、手伝うというのでお米を研ぐシーンがある。何と彼女は泡たて用の攪拌棒でお米をかき混ぜていた。これで二人の子どもを持つ母親だというのだ。たぶん石井桃子の体験した実話ではないか。松居一代なら、グッジョブというかもしれないが、主人公達はあっけにとられていた。

 これもWOWOWのドラマ『人質の朗読会』(2014)。原作は小川洋子。小川洋子と云えば『博士の愛した数式』を思い出す。これは映画化され、寺尾聰と深津絵里が出演していた。不思議な小説を書く人で、短編集を持っているが、まだ完読していない。『人質の朗読会』には久しぶりの大谷直子が出演している。

 ラジオ局の記者(佐藤隆太)は、尋ねてきた女性(波瑠)から録音データを託される。南米でテログループに日本人が襲撃されて人質になり、監禁され続けるのだが、その様子を盗聴していたときのテープから起こされた音声データであった。

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 人質たちはどのような日々を暮らしたのか。やがて人質のなかに作家がいることから、気力が萎えるのを奮い立たせるためにそれぞれの人の心に強く残っている出来事を文章にして、それを順に朗読するという試みを始める。

 こうしてその出来事を通してそれぞれの人間の人生が、つまりその人そのものが描かれていく。本当に人の人生はさまざまである。この人質のなかに女性(波瑠)の母親(大谷直子)がいたのである。

 ラストに記者(佐藤隆太)はこの盗聴を続けていた兵士のひとりに会いに南米まで出かけていく。ここで渡されたものは、プロローグで兵士が拾い上げた文字の書かれた一枚の板だった。人質たちは政府軍の強行突入の際に全員亡くなっているのである。彼等は死んだが残された音声データは彼等の生きた証として残されたのである。人が生きたということの意味を考えさせられた。

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