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2018年1月14日 (日)

前回の若干の補足

 孤独は寂しいもので、寂しい思いがつのることはつらいものである。そこでは、人は話し相手がいないことに耐えられずに自分自身との会話を始める。話しかける私と話しかけられる私は同じ私であるが、話しかけられる私は今現在の私であるとは限らない。過去の私であったり、未来の私であったり、こうでありたい私であったりする。

 そして更に孤独が深まれば、まさに今の私にそのような私たちが語りかけてくるようになる。こうしてさまざまな私たちが語りかけ、語りかけられて、それらがジャズのセッションのようであるような、にぎやかな孤独の世界が語られているのが、『おらおらで ひとりいぐも』という小説である。

 そういう会話の積み重ねが考えを深めていく。主人公の桃子さんという老女は、死んだ亭主もそう言っていたというように、もともとものごとを考えることが好きである。考えは自分の枠を越えられない、というのは間違いである。考えは自分の枠を越えるのである。そうして思考が深化すれば自分自身の枠も拡がっているのである。

 そうしてついに孤独の寂しさの極地を突き抜けたとき、自分自身がすべてのしがらみから解き放たれた自由な存在であることに気がつく。すでにうすうす桃子さんはそれに気がついていたけれど、それを真に悟るのである。

 そのとき彼女の目に映る世界は活き活きとして祝福に満ちている。老人であること、孤独であることは不幸せか?そうではないかもしれないことを気づかせてくれるという意味で、この本は素晴らしいのである。私は桃子さんに心から共感する。そしてこの本は、読んだら誰にでも分かるだろうが、久米宏の言うように「ゲラゲラ笑って読む」ような本では絶対にない。

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