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2018年4月17日 (火)

柚月裕子『狂犬の眼』(角川書店)

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 本屋大賞にノミネートされた『盤上の向日葵』の著者の新作であり、小説野性時代に連載されていたものを大幅加筆修正したものだ。『孤狼の血』(役所広司主演で映画化される)という作品を継承した物語になっている。どちらも読んでとても面白かった。振り返るとこの著者の本を他にも何冊か読んでいる(『慈雨』、『合理的にあり得ない 上水流涼子の解明』等々)。

 柚月裕子という人は名前の通り女性なのだろうか? どうも間違いなく女性のようである。このようなハードな男の世界を、男の血のたぎりを描くことができるのは男だけかと思っていたが、そうではないようだ。学生時代を山形に過ごし、東北に思い入れのある私としては、著者が岩手県出身で山形在住と知ったこともなんとなく嬉しいことである。

 物語の舞台は広島、映画『仁義なき戦い』に似た世界が語られている。時代設定は平成二年ころになっているから、もちろん『仁義なき戦い』よりもずっと後であるが。私もこの映画のシリーズはほとんど劇場で観たし、だいぶ後にビデオ屋でもう一度全て観直したので、イメージが強く残されている。Wikipediaで彼女の項目を見たら、やはり『仁義なき戦い』シリーズのファンだと書かれているではないか。

 やくざを嫌悪し、そのためにやくざ映画を嫌う人は多いが、現実の暴力団としてのやくざは大嫌いだし関わりになることなど決してないように願うけれど、やくざ映画は極限状態での男の生き方をドラマとして楽しむ分には面白い。ある意味で時代劇やSFと同じ、現実にない世界を楽しむという楽しみ方である。

 主人公は警察官でありながら、男と男として、あるやくざの男と対峙し、互いに惹かれあっていく。その主人公の見ている世界が描かれ、そのやくざが組織の論理ではなく、仁義というものを貫くことで生じる事件の顛末が描かれていく。

 正義というものがこれほど世の常識と違う世界であっても、そこには共感や感動があり得るということをあらためて知る。やくざ映画を観た観客は、映画館を出たときに肩で風を切るように歩いてしまうという。そんな気分にちょっとなる。

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