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2019年8月13日 (火)

千日酒

(これは『漢語四方山話』からの全くの引き写しである)

 

 むかし中国に劉玄石という男がいた。中山(ちゅうざん)という所の酒屋で酒を買ったら、店の主人が「千日酒(せんじつしゅ)」という銘柄の酒を選んで売ってくれた。ところが主人はついうっかりして、その酒の強烈な効き目を客に説明するのを忘れていた。
 この酒、「千日酒」という名の通り、一度飲めば千日の酔いがさめぬという、いわくつきのしろものである。 玄石先生、家に帰ると、早速きこしめした。するとたちまち酔いがまわり、ぶっ倒れて前後不覚。三日経っても四日経っても、意識が戻らぬ。家人たちはてっきり死んだものと思いこみ、泣く泣く丁重に埋葬した。
 それから三年近い歳月が流れる。中山の酒屋の主人は、「あの客人、そろそろ酔いのさめる頃か」と思い、玄石の家をたずねて来た。ところが家人たちは、三年前に大酒飲んで死んだので埋葬したと言う。
 さあ大変とばかり、酒屋の主人はみなに手伝わせて墓を掘りかえす。棺桶の蓋をあけると、玄石先生、この時はじめて酔いがさめ、不思議そうな面持ちでやおら起き上がって来た。
 この話、つけたりがある。墓をあばいた人々は、棺桶にこもっていた酒気にあてられ、三日三晩酔いつぶれていたそうな。

 

 有名な話らしいが、私は知らなかった。

 

 火葬でなくてよかったとまず思う。ともかくホラ話としてはよくできていて面白い。面白いけれども理屈屋の私としては、どうして中山の酒屋の主人は千日経ってから玄石のところへ出かけたのか。本人が飲む前にその酒のことを伝えに飛んでいくべきであろう。よしんば手遅れになったとしても、家人に伝えることも出来る。

 

 それにしても、千日も酔って昏睡する酒だとわかって誰が買うというのだろうか。又、千日過ぎたのに、棺桶に残った酒気で三日も酩酊するのなら、玄石先生、起こされなければ永遠に酔ったまま眠り続けたかも知れない。これなら飲まずに匂いをかぐだけで酔えるから、安上がりの酒か。

 

 ホラ話に理屈をこねてもしかたがない。酒が好きだからこんな話が特に面白く感じた。
ポチッとよろしく!

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