アメリカ大陸全体を支配下に置きたいというトランプのもくろみの一端が、ベネズエラのマドゥーロ大統領の拉致であった。明らかに国際法的に問題があると思うけれど、トランプの言い分には「盗人にも三分の理」程度の大義名分がないことはないようだ。しかしその他の中南米の国々が今まで以上にトランプのアメリカ合衆国に対する警戒心と反発を増加させたことは間違いない。中国がそこをチャンスと捉えればうまくやれないことはないと思うが、いまの中国にはどうもその余裕がないようだ。ベネズエラでアメリカは何を得て何を失ったのか。その結果が人ごとながら興味がある。
トランプにとってグリーンランドもアメリカの一部であるらしい。その領有化の意思を見せたが、ヨーロッパの反発を招いただけに終わっている。さらにカナダはそもそもアメリカの一部であるかのような発言をしてカナダの激しい反発を招き、カナダの首相が習近平と親しく会談することになった。アメリカの盟友だったイギリスも同様の行動に出ている。アメリカがアメリカ大陸を支配するというもくろみは、今のところ逆にアメリカの孤立という結果になっている。アメリカが信頼できない国だと皆が考えるようになった。信頼できない国からは次第に離れていく。ドルが基軸通貨であるのはそのアメリカの信用に基づいているはずで、信用が失われればドルはその特権的地位を失うことになるだろう。
ところで心配なのはキューバである。十年ほど前に友人とキューバに行ったことはこのブログに何度も書いた。ゲバラについてささやかながら知ることがあり、それをきっかけにカストロの革命政権の樹立に至る歴史も少しは知るようになった。それにヘミングウエイについても思い入れがあった。それらをもとに現地でいろいろ見聞きして学んだことは深く記憶に刻まれている。キューバの国民はひどく貧しい。貧しいけれど陽気に見えた。それは自分だけが貧しいのではなく、皆が貧しいからそれほどそれを恨んだりしていなかったからだと思う。そして為政者も国民同様貧しい暮らしをしているようにみえた。そして貧しいのはアメリカが経済封鎖をしているからであることを皆が承知していた。
たまたまわたしが行った頃は、そのアメリカの締め付けが緩められた時期であり、それを機に観光客がどっと押し寄せていた。特に日本人が急増したとも言う。首都のハバナでは古く傷んだ建物が次々に壊され、新しい建物が立てられつつあった。観光客によって一気に外貨が流入し、観光に携わる人たちはにわかに豊かになって行った。そのときに感じたのは、この偏った豊かさが貧富の差の感覚を生み出し、それについての恨みを増大させないだろうか、という危惧だった。そのあとのことは知らないが、アメリカが再びキューバを締め付け、キューバはまた行きにくい国になったらしい。
アメリカは、キューバ国民はキューバ政府の圧政に苦しめられていると言い立てている。しかしキューバ国民が貧困にあえいでいるのはアメリカが経済封鎖をしているからなのだ。いまベネズエラからの石油の供給が止まり、エネルギーの不足によって電気も不足し、流通も困難を極めているようだ。キューバでもわずかであるが原油は産出するが、重質油であり、量的にも少ないから自活はできない。それに重質油を採掘し精製するための設備も技術もない。深刻な状態であろうと心配している。
今こそキューバ解放のチャンスである、とトランプは豪語する。解放されたキューバが、私の見た貧しい国よりも豊かになるとは想像できない。革命で解放される前の、アメリカに収奪され続けたキューバに戻るだけの未来が見えてしまう。
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