中国ウオッチ・高速鉄道事故まとめ
今回の温州の鉄道事故について、中国当局(鉄道関係者)はまず事故そのものを隠蔽しようとした。しかしそれが不可能なことを知ると事故をなるべく小さなものだったように工作しようとした。事故被害は報じられているよりも大きかった可能性があるが、あまり極端な隠蔽はできないだろう。
あの慌てたような事故車両の処理の仕方や被害者の捜索の中途半端な打ち切りが隠蔽体質を表している。
中国政府はかねてから鉄道局の独走に対して制御を試みていたが、江沢民などのグループの資金源でもあり、なかなか思い切った手を打てずにいた。。江沢民が健康上に問題を抱えて力を失い出すと鉄道局トップとナンバー2が相次いで汚職を理由に更迭された。
今回の鉄道事故や上海-北京間高速鉄道の新規開業以来のトラブル続発に対する中国国民の批判を放置しているのは、鉄道局の力を弱めることを狙っているものといわれている。
しかし問題はもっと本質的なものではないだろうか。
エスカレーターやエレベーターでの相次ぐ事故、橋や道路、建物の崩壊事故、食品への異常な量の添加物の蔓延、農薬汚染の拡大、企業による環境汚染、海上油田の油流出事故の放置と隠蔽など、安全を軽視する中国自身の体質が問われているといえるのではないだろうか。
問題が起こっても批判につながることを恐れて隠蔽を続けたことで、問題点が明らかにされることがなく、同じことが繰り返し起こってしまう。
問題があってもなかったことにするという手法はもはや限界に来ている。
問題が解決できなければ信用を失うだけである。
中国は安価を売り物に世界の製造工場として急拡大した。しかし金が貯まれば国民は分配を要求する。賃金の上昇は安価での生産を維持できなくした。「安かろう、悪かろう」、から「安かろう高かろう」ではものは売れない。
安価品の生産を主に行ってきた珠海デルタ地帯の中小企業の2~3割が採算割れで倒産ないし倒産寸前といわれている。
打開策は日本や韓国がたどってきたように高付加価値品の生産への移行であるが、ここでは最も「信用」が大事なのである。自動車や家電製品がすぐ故障するようでは誰も買うはずがない。
その信用を中国は国全体で失っている。信用回復にはかなりの努力が必要だが、問題点に気がついているのは中国の一部の人間だけのようだ。国民全体が問題点に気がつくにはまだまだ時間がかかりそうである。
今回の事故はささやかなきっかけにはなりそうだが、批判が体制にまで及ぶ事態に対し、政府がとる対策によっては、きっかけも握りつぶされるだけに終わるだろう。
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