吉村昭著「三陸海岸大津波」(文春文庫)
これは昭和45年(なんと40年も前)に、過去何度も三陸海岸を襲った大津波についての記録と証言を詳細に調査して報告したもの。田野浜、田老、宮古、山田、大槌、釜石、女川、と今回の大震災で大被害を受けた地名がこの本に頻出する。まるで今回の震災についてまとめられた記録を読んでいるようである。はたして今回の震災についてこれだけ臨場感とリアリティのあるものをまとめられる人があるのだろうか。吉村昭が今はないことが惜しまれる。今回の震災の全貌はこれからまとめられることだろう。日本人はそれを見る前にまずこの本を読んで三陸海岸の津波について予備知識を持ってほしい。テレビの映像よりも間違いなくその実像が実感されるだろう。200ページ足らずの文庫本であり、読むのにそれほど時間はかからない。繰り返すが、テレビで見ることで事実を見ているつもりになっているが、この記録を読む方がはるかに自分の問題として現実感があることに今更ながら驚かされる。
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