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2011年7月28日 (木)

木内一裕著「アウト&アウト」(講談社文庫)

こんな主人公、見たことがない。現実ではこんな人間とはお近づきになりたくないが、物語の中で出会うぶんには痛快きわまりない。
ハードボイルドの要諦はこれなのかもしれない。自分が殴られたり斬られたり撃たれたりしたら痛いどころではないが、小説や映画の中なら感情移入しながらいくらでも我慢できる。主人公が親しみの持てるキャラクターでは傷つけられたりしたら不快感もいささかであるが伴ってしまう。ヤクザ出身の探偵なら暴力にも強いだろうと得心してしまう。
だが物語の進展とともにその主人公に気持ちが入ってしまう。気持ちの移動する幅が大きい分、痛快さも大きくなるのだ。
サブキャラクターの小学二年生の女の子、栞がとてもかわいい。この子の存在が物語の値打ちを上げている。
とにかくテンポよく読めてしかもすばらしくおもしろかった。
この作品は前作の「水の中の犬」から続いているという。読もうと思いながら買いそびれていた本だ。探して読もう。

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