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2011年7月 5日 (火)

安野光雅編集「中野好夫エッセイ集 悪人礼賛」(ちくま文庫)

中野好夫は1953年に東大教授を辞任してから評論家、平和運動家として在野で活動。1985年没。戦後すぐの1946年から1950年代のものを主体に1970年代までの文章を安野光雅が編集した。柔軟性のある硬派と言おうか、自分の信念は信念として、他人の意見も切り捨てずに静聴する懐の深い姿勢が大人を感じさせる。ともすると日和見に見られてしまうのは相手を尊重するからであるが、読みが浅いと旗幟を鮮明にしていないように見えてしまうのかもしれない。画家である安野光雅がここまで敬愛するのはその大人の生き方の故なのだろう。じっくりとした文章は、戦後すぐの、戦争に対する反省、日本が自衛隊を発足させたこと、日米単独で講和条約を結んだこと、安保について、めまぐるしく状況が変わる中で、その時々に戦争終了直後を振り返りながら自分の考えを述べていく。戦後昭和史を復習するためにもよい勉強になる。今、憲法改正についてどう考えるのか、この本は大きな指針を示してくれている。中身が濃いので読むのに時間が必要だが、今のマスコミの軽すぎる論調に毒されたあたまをもう一度リセットするのによい本だ。

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