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2011年7月19日 (火)

首藤瓜於著「脳男Ⅱ 指し手の顔 上・下」(講談社文庫)

前作「脳男」(乱歩賞受賞作)で特異なキャラクターを創造した作者が7年ぶりにその続編を出した。前作は評判になったので読んだ人が多いと思うが、これを読むなら前作を先に読むことをおすすめする。先にこちらを読んでも前作が必ず読みたくなるだろうけれど、前作から引き続いて登場する人物が多いので前作から読む方が世界観に入りやすい。
精神科に入院歴のある人物による無差別殺人が起こる。犯人の断片的な思念が事件の経緯とともに語られていく。理解不能な強迫観念がフラッシュバックのようにつづられていく。犯人は最後には自滅的な死を迎えるが、目的は皆目分からない。精神疾患の患者を治療も出来ずに放置したとして病院は激しい非難を受ける。調べていくと犯人はそれほどひどい疾患ではなかったこと、治療の効果も上がって確かに問題なくなっていたはずであることが分かるが、世間やマスコミは納得しない。
最近精神科の治療を受けた人間による不思議な事件が何件かあったことも分かってくる。そこに突然フィクサーであり財産家であるが、人前に全く姿を現さない老人が惨殺される事件が起こる。そして事件現場に残された血液から犯人は「脳男」こと「鈴木一郎」であることが判明する。一連の事件とこの「脳男」との関係は何か。事件を追及していた刑事が殺されるが、現場に据えられた監視カメラに写っていた美貌の女性は何者か。
物語の性質上、視点は犯人であったり、警察であったり、精神科医であったりする。というか、いわゆる神の目での視点である。読者は著者の提供する、断片的であるが俯瞰的な視点から事件全体を見ることになる。事件の目的、真犯人の特殊な生い立ちなどについて違和感を感じる人もいるかもしれないが、物語として一気に読めばおもしろさを損なうものではない。私は一気に読めました。
「脳男」の生い立ち(これはいってもかまわないと思うが、脳男が真犯人ではもちろんない)が少し明らかにされる。そして「脳男」は事件に大きく関わりながら最後は静かに退場する。続編がいつか作られることは明らかだ。さらに「脳男」についていろいろなことが分かると思われる「脳男 Ⅲ」が出たら絶対買うぞ。

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