梁過著「現代中国『解体』新書」(講談社現代新書)
63のキーワードで現代中国の世相がよく分かるようになっている(帯にそう書いている)。著者は大連生まれの中国人。中国の新聞、雑誌、ネットなどから現代中国の特に若者たちの行動や考え方、価値観を表す言葉を選んで意味と背景を解説する。1980年以降に生まれた中国の若者たちは一人っ子政策の申し子であり、昔の中国を全く知らない。小学校、中学校、高校と、教えられた歴史しか知らない。儒教的な価値観もない。世界を損得の価値観でしかとらえることが出来ない。しかし中国の社会の不条理についてはあきらめよりはまだ憤りのこころを持っている。彼らの結婚には我慢の部分がないから離婚が急増する。大学生の就職率は中国政府が発表しているものより遙かに低い。当然結婚できない男たちが急増している。女たちは日本と同様男に三高を望むがそんな男は一握りしかいない。結婚する人が減り、結婚年齢が上がり、離婚率が上がってかなり危機的な状況になりつつあるようだ。貧富の差も拡大している。中国の不満のエネルギーはかなりたまっているようだ。
たとえば「月光族」「房奴」「急嫁族」「整形経済」「蟻族」「富二代」「錯峰」「低炭」「山寨」「人肉」など、想像通りのものもあるし、意外な意味のものもあります。ちなみに「房奴」の意味は、「房子」が家のことなので住宅ローンの重圧に追われる人のことです。奴とは奴隷の意味です。今中国はやや治まりつつあるとはいえ不動産投資のブームのせいで不動産価格が暴騰し一般の人には高嶺の花になっています。ムリして手に入れてもローンの支払いで生活はとても苦しいのです。多分日本よりも住宅を入手するのが大変になっています。どうです、興味があるでしょう。是非読んでみてください。中国暴動のニュースの意味などが少しは分かります。
« 大沢在昌著「氷の森」(講談社文庫) | トップページ | 大沢在昌著「絆回廊 新宿鮫Ⅹ」(光文社) »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 『パイプのけむり』(2024.09.13)
- 戦争に当てる光(2024.09.06)
- ことばと文字(2024.09.05)
- 気持ちに波風が立つような(2024.09.02)
- 致命的欠陥(2024.09.01)
コメント