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2011年7月22日 (金)

曾野綾子著「悪と不純の楽しみ」(PHP文庫)

世の中にはびこる正義の大合唱に対して、うさんくさい感じを持つのは理性ある人なら当然のことだろう。声高に権力者や資本家を糾弾するシュプレヒコールを叫ぶリーダーを先頭に、それに唱和しながらぞろぞろと歩くデモというのがどうにも耐えられなかった。いわゆる団塊の世代の端っこに属する身としてはそのような政治行動を全くしなかったわけではないが、様子が分かったとたんにそういう活動からエスケープした。マスコミの言葉狩りの嘘くささは耐えられない。弱者の立場を擁護することがエスカレートして、弱者がまるで一つの権力者のように祭り上げられて、結果的に弱者が生きにくくなるような社会にしているのは誰だ。いや、これはこの本に書いてあることではなく、私がただ普段感じていたことをこの本で励起されただけのことである。
曾野綾子はただ自分が取材やいろいろな活動で実際に世界を歩いて、そこで経験したこと、感じたことを原点に、マスコミや世間の物言いを批判しているだけである。世界には物事を単純に正義と悪の二つに振り分ける原理など存在しない。人が日々新聞やテレビですり込まれた価値観に対して、世界はそう単純ではないよ、といろいろな見方を見せてくれる。少し前(1994年)に書かれた本だが、書かれている内容は全く古びておらず、今まさに通用する内容である。

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