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2011年7月20日 (水)

池田清彦著「科学とオカルト」(PHP新書)

科学史の村上陽一郎の著書などに詳しく説明されているが、科学は元々キリスト教という宗教とオカルトを両親として出発している。ギリシャ哲学に現代科学の萌芽のようなものがあるが、いわゆるヨーロッパルネッサンスの中から生まれた現代の科学はギリシャ哲学とは断絶している。この辺は易しく解説した科学史の本がたくさんあるので探して読んで欲しい。特に村上陽一郎の本なら間違いない。ただしやさしいものとむつかしいものがあるので中を確認して選ぶこと。オカルトが秘術であったものが「再現性」と「客観性」という二つの公共性を持つことで科学が生まれた。この本はそこまでを簡単に概説して、その科学がどんどん細分化し、難解になって一般の人の理解を超えてしまった現代の状況を原点に据えて、あなたにとっての科学とオカルトの意味をあらためて問う。
とてもおもしろい本で、なぜオウム真理教のような新興宗教に科学者である人たちが吸い込まれたのかがよく分かる。知的刺激にも満ちているのだが、ちょっと読み手の私が集中力を欠いた読み方をしたため、この本の値打ちを半分しかつかめなかったような気がする。これはこの本のせいでなく、全て読み手の責任である。科学という一つの宗教をさらに高い次元から見直すことが出来る良書である。
「かけがえのない私」、「一つだけの花」を探す人の多い現代の陥穽の危うさを認識するにはこのようなアプローチもあるのです。

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