アーバン・ウェイト「生、なお恐るべし」(新潮文庫)
訳・鈴木恵。スティーブン・キングが絶賛したという。確かにテンションの高い状態を全く切らすことなく、ラストのクライマックスに持っていく文章力は絶賛に値する。
たまたま正義感に駆られた保安官補によってベテランの「運び屋」が窮地に陥り、仕事をやり損ねたために、始末人が動き出す、という云ってみればそれだけの話なのだが、それぞれの人物が読み手にリアルに迫ってくるので、善とか悪とか云う単純な分け方を越えて、「運び屋」である主人公に感情移入していく。
どんな人間にも生活があり、家族がある。絶体絶命の状況の中で、何が自分にとってかけがえのないものと考えるかで、その人間の値打ちが決まるのだ。
久しぶりに翻訳小説を読んだけれど、選択を誤っていなかった。読後感も良いし秋の夜長におすすめの一冊だ。
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