佐々木譲著「密売人」(角川春樹事務所)
著者の北海道警シリーズの最新作。今警察小説がおもしろい。本屋の店頭にたくさん並んでいてランダムに選んで読んでもたいてい外れが無い。その中でも佐々木譲のものは特におもしろい。
北海道警は、過去(2003年)裏金問題で、道内全域にまたがる不祥事として告発され、自殺者も出ている(ちなみにそのとき告発者として名を上げた代議士のひとりが今回大臣就任後8日間で辞任した鉢呂経産大臣だ)。その後、そのような問題を起こさないために、警官の異動が頻繁に、しかも他部署にまたがって行われるようになり、地元とのつながりが切れてしまったり、ベテランが存在しにくくなるなどして捜査に大変な齟齬を来しているのが実情である。これは現実の話である。
これを伏線として、この北海道警シリーズは書かれている。警察の組織ぐるみの隠蔽体質を告発したことで裏切り者として干されている刑事と、彼の身を守り真実を暴いたため不遇に置かれた刑事たちが、警察を愛するが故に、もがきながら事件と取り組んでいく姿が感動的に描かれている。
今回は警察の協力者だった人間が続けて不審な死を遂げたことの関連に気がついた彼らが、これから襲われると思われる家族を必死で探し出して守る話である。そしてなぜ協力者の名前が漏れたのか、その真実が暴かれたとき、彼らの怒りは頂点に達する。情報を漏らしたものへの報復はどうするのか。
本当に興奮するほどおもしろい本に出会うとうれしいものです。
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