川瀬七緒著「よろずのことに気をつけよ」(講談社)
本年度江戸川乱歩賞受賞作。
本はおもしろければ値打ちがある。特にエンターテインメントはそれが第一である。文章や展開の仕方に何となくなめらかさが欠けるこの本も、とにかくテンポがよいので細部にこだわるよりも、どんどん先を読ませてしまうおもしろさがある。
最初はわかりにくかったサブキャラクターの少女・砂倉真由の抱えているものが明らかになっていくにつれて、彼女の魅力が輝いてくるとともに物語に生命が宿ってくる。この物語は彼女の脱皮の物語でもある。
人には情がある。その情を揉み潰すような不条理に出会えば怨念となり、呪いとなる。その呪いには何らかの力があるのだろうか。呪う人に対して、呪われる人にそれを感応するこころがあれば、何らかの作用があるともいえる。では呪われた人間が何とも感じなければ・・・。
とにかくこの物語のテンポに乗ることさえできれば何時間かの楽しい時間を過ごすことができることを保証する。
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