劉傑著「中国人の歴史観」(文春新書)
著者は北京生まれで東京大学の博士課程を卒業後現在早稲田大学の助教授。近代日本政治史、日中関係史を専攻。
中国からは良く日本の歴史観に問題がある、との指摘を受けるが、彼等の言う歴史観とは何なのかは日本人にはなかなか自得的に理解できるものではない。そこで日本のこともよく分かりながら、しかし中国人として確固たる歴史観を持っているであろう著者のこの本を読んでみた。
導入部では歴史観の違いが違和感として引っかかり、スムーズに読み進めなかったが、違う歴史観を知ろうとするのだからそれは当然なので、そのまま読み進んだ。著者は日本人がどういう歴史観を持っているか良く承知している。その読者にあえて中国の近代の歴史の認識の仕方と、なぜそのように認識するのかその理由を繰り返し説明を行っていく。
この本は中国側に立って一方的に説明する本ではないので安心してほしい。歴史を善悪論で語る駄本とは違う。
納得したわけではないが、なるほどそうなのか、と理解できたことがいくつかあった。それを簡単に説明するのはむつかしい。それは出来ればこの本を読んで、背景を良く理解した上で考えてみてほしい。
中国のいろいろな行動についてなぜそんなことをしたり言ったりするのかが少し分かるようになるかもしれない。
同時にこの本を中国人が読むのもずいぶん意味があるのではないかと感じた。読まないだろうけど。
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