今野敏著「レッド」(ハルキ文庫)
テレビでも好評だった神南署安積班シリーズで有名な今野敏は多ジャンルに多くの作品を発表している。エンターテインメントに徹しているのでどの本もおもしろい。
警視庁捜査四課のベテラン刑事が、環境庁の外郭団体に左遷させられる。ほとんど仕事らしい仕事も与えられず、意欲を失っているところへ不思議な仕事が命じられる。山形県のある町にある、沼の環境調査というものだった。しかも自衛隊からの出向という、得体の知れない男との同行調査だ。ところが町はその調査をいやがる。いったい何があるのか。
調査した、というかたちだけ整えればいいと赴いた調査が、実はとんでもない国際的陰謀につながっていた。
単行本での作品発表は1998年。アメリカはクリントン大統領時代。後で文庫化されたものが今回新装版で刊行された。
解説にもあるが、人が何人か死んでいるのに悪のために悪を行っている人間は出てこない(ちょっと出てくるが)。それぞれの人間が何らかの大義名分のもとにおこなった行動がこのような事件に発展するが、その結末が陰惨になっていないのは救いだ。
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