逢坂剛著「禿鷹の夜」(文春文庫)
逢坂剛にはスペインものを始め、シリーズものがいくつかあるが、「禿鷹」こと禿富鷹秋のシリーズはハードボイルドとして一級だとおもう。
物語としては特別奇抜なものではないが、文体がハメットやチャンドラーに似て乾いていて、主人公の内面を全く表現せず、第三者の目から見えるものだけが表現されている。古いといえば古いが正統派である。
この「禿鷹」、神宮署の警部補なのにやることはむちゃくちゃである。そして一見、成り行きで傍若無人に行動しているように見えるが、実はかなり計算しており、巧妙であることが分かってくる。
少しウェットなやくざの組にダニのように食らいつく。そして結果的に南米マフィアに浸食されそうな渋谷界隈を単身で守ることになる。
見た目も良いとは言えず、フェミニストから見たら特に唾棄すべき存在だが、何となく嫌いになれない。おもしろいキャラクターを造形したものだ。続編をすぐ購入した。
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