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2011年10月 2日 (日)

仲正昌樹著「知識だけあるバカになるな!」(大和書房)

著者は金沢大学法学部教授で専攻は政治思想史と比較文学。
ツチヤ先生と内田樹先生の本ばかり読んで先生達の語り口がうつってしまうと、誰が語っているのか分からなくなるので、違う本も交えてみようと思想のコーナーで読みやすそうな本(易しくて解りやすいということ)を探したらこの著者の本を見つけた。(もう一冊「なぜ『話』は通じないのか」という本も購入。さらに久しぶりに小浜逸郎の本「生きることを考えるための24問」を購入。これは「なぜ人を殺してはいけないのか」「人はなぜ働かなければいけないのか」「人はなぜ死ななければならないのか」の小浜倫理3部作を一冊にまとめた完全版。二段組みでボリュームがある。読むのが楽しみ。)
この本は大学の新入学程度の若者に、ものを学ぶと言うことの意味をわかりやすく説明し、知っている、ということと識ること、理解することの大きな違い、そして「疑う」ということの学問的意味を教えている。あらためて反省することが多い。
また、基本的な弁証法的論争の成り立ちから「二項対立」思考の愚かしさを説く。弁証法とは、違う意見を、議論を戦わせるうちに互いが自分の間違いを修正することで高めあい、思い込みから新たなる知識にいたる方法のこと。しかしヘーゲルからマルクスの唯物論的弁証法にいたると、その手法を使った論争は「自分は絶対的に正しいから相手は間違い」になってしまった。このメカニズムについて詳しく書かれている。
「知識だけあるバカ」が跳梁跋扈する現代で、いかに生き抜いていくのか、そしてよりレベルの高い知識に至るための最初の入り口をこの本は示している。現代は間違った入り口だらけなのだ。
この先生にオリエンテーリングされている金沢大学の学生は幸せである。
こういう本を大学の教養時代に必読書として学生に読んでもらうと良い。大学で学ぶ、ということ、教養とは何か、ということが、分かる若者には分かってもらえるのではないか。
久しぶりに初心に返った。また大学生の時代に戻ってやり直したい。

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