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2011年10月 3日 (月)

張平著「凶犯」(新風舎文庫)

張平の字が間違っていました。修正します。

荒岡啓子訳。中国のベストセラー作家・張平の日本初上陸作品(中国での出版は2001年、日本での出版は2004年)。
出版されてすぐ購入したのに読まずにいた(絶対おもしろいだろうと思っていたのに)。読み出したらその圧倒的パワーに衝撃を受けた。
すごい本だ。でもこの本は多分手に入りにくいと思う。この出版社は今まで見たことがないから気がついたときにすぐ買ったけど、普通本屋にこの出版社を置いている棚はない。
張平のこの後の「十面埋伏」という本・上下巻も買ってある。ゆっくり読むつもりだ。
「凶犯」は戦争(中国とベトナムの戦争)で片足を失い、身障者となった主人公が、林野局の監視人の仕事を得て、その仕事を忠実に実行することで
起こる地元との軋轢から物語が始まる。
豊かな山林を背後に控えた村の、山林の入り口に監視の山小屋がある。村はみな豊かである。そしてこの監視人の役を引き受けた前任者達も短期間で豊かになって転任していく。
主人公の狗子(ゴオツ)はそのからくりを知るが、断固として妥協しない。村だけでなく、郷の役人も、さらに県の役人も牛耳っているのは凶悪な四兄弟である。ついに狗子と四兄弟は互いの生存をかけた戦いに突入する。
物語はその戦いの結末となる事件をフラッシュバックのように前後しながら語られていく。いったい何が起きたのか、なぜそのようなことになったのか、これでもか、という圧倒的なボリュームで経緯が語られていく。
物語のなかで中国そのものが善悪を越えてあらわにされていく。
張平は書いたものを告発されて長い不遇の時代を耐え抜いた。不屈の闘志でそれをはねのけた闘士である。この本でも読み方によれば体制批判だが、誰も今、彼を告発できない。それぐらいエネルギッシュでパワフルな物語は、そのままとてつもなく熱くおもしろいのだ。
中国の現代エンターテインメント小説恐るべし。

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