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2011年10月31日 (月)

中国ウオッチ・故宮博物院

中国歴代皇帝の秘宝を収蔵する台北の故宮博物院が、今後10年を掛けて展示面積を5倍に拡張するという。中国人の台湾観光が解禁されたことをきっかけに中国人の観光客が急増して混雑がひどいことが問題となっており、その緩和を狙う。また収蔵品が膨大なことから、数ヶ月ごとに展示品を入れ替えてもほんの一部しか見られなかったがこれもすこし解消される。
ご承知のように故宮博物院の文物は、蒋介石が北京の故宮から特に選りすぐりのものを持ち出したものだが、その北京の故宮にもまだ世界的な秘宝がたくさん残されている。ところがその調査・目録整備がほとんど行われていない。そのためにこっそり横流しされたり、しかるべき保存がされずに朽ち果ててしまうものもあるやに聞き及ぶ。
中国の文物は世界に散逸している。しかしドイツに持ち出されて空襲で失われたものを除いてほとんどが大事に収蔵され、時に展示公開されている。しかるに本家本元の故宮では地下の倉に放り込んだままである。これでは散逸した方が文物にとっても世界の中国研究者にとっても幸せだったことになる。
文化大革命という、文化を破壊する暴挙から中国が早く目覚めて残った文物を正しく管理することを切に望む。今中国は絵画を始め芸術ブームだが、そのものの値打ちより投資のための取引の材料としてもてはやされているようだ。
そんなものは日本のバブル時代にいやというほど見てきた。
おかしなナショナリズムに血道を上げるより自国の文化をまず見直すことをお勧めしたい。

先日、野田首相が韓国を訪問した際に日本に持ち込まれていた韓国の歴史的に貴重な文物の一部を変換した。多くは朝鮮を併合した際に収奪に近いかたちで持ち込まれたもののようだ。世界的にこのような文物を返還する動きが始まりつつある。日本が率先して返還行動することはよいことだと思う。ただし、返還されたものが然るべき扱いを持って保管展示されることが前提なのは当然だ。

中国は今回の日本の行動について即座にメディアでこう訴えた。韓国だけに返還するのはおかしい、中国にも返せ、と。当然収奪したものは交渉の後返還することもあって良いだろう。しかし今、日本にある中国由来の文物のほとんどは遣隋使、遣唐使から始まって、然るべき対価のもとに手に入れたものであり、そのまま中国にあったら戦禍で失われたであろうものが、日本に移されたために貴重な遺産として残ったものばかりだ。そこのところは誤解のないよう日本も中国に対していちいち説明する必要があるのではないだろうか。

多分中国人の多くは日本にある中国の貴重品は全て日本が中国から奪ったものと教えられ、そう思い込んでいるような気がする。下手をすると日本の若い連中もそう思っているのではないだろうか。心配だ。

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