高嶋哲夫著「冥府の虜 プルトーン」(祥伝社)
老母を説得してようやく温泉に行くことになった。決まったらうれしそうな顔をしている。すねていたのだろうか、よく分からない。今日群馬県のその温泉に出かける。小さな温泉なのでインターネットはつながらないかもしれない。
さて、本題だが、この本の帯に「友よ、娘よ、愛する女よ・・・慟哭の核サスペンス」とある。高速増殖炉の臨界稼働を巡って、科学者とプルトニウムの争奪のための国際的謀略が進行する。北朝鮮からのスパイを中心としたテロリストたちと、ロシアの科学者集団の陰に隠れたスパイが暗闘する。主人公は高速増殖炉の事実上の設計責任者である。主人公の愛する人たちが奇禍にさらされたとき、主人公も傍観者ではいられなくなる。主人公自らが選んだ道とは何か。
400ページを超える大部の本だが、冗漫なところがなく、冒頭から緊張感があり、読者を引きつける謎が与えられているのでどんどん読み進める。チェルノブイリの記憶が重低音で背景に響いている。この本は平成12年に出版された本である。だから今回の東日本大震災を継起とした福島原発事故は想定されておらず、原発に対する世論も違う。しかしその問題点や危険性について賛否両論を含めて詳しく書き込まれている。今だから書かれた当時より実感をもって感じられるものがある。
買ったのに読みそびれていた本が数十冊あって、気が向いたものを抜き出して読んでいる。この本はかなりエキサイトして読むことができた。あたりだった。
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