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2011年11月28日 (月)

内田樹著「映画の構造分析」(文春文庫)

副題「ハリウッド映画から学べる現代思想」。
出だしに「これは映画批評(のような)本ですが、映画批評の本ではありません」とある。「みんなが見ている映画を分析することを通じて、ラカンやフーコーやバルトの難解なる述語をわかりやすく説明すること」を目的とする本なのだ。
映画とはどういう芸術でありうるか、という導入部で、有料であり、多数の観客を動員して支持を得なければ成り立たないものであることを挙げている。当たり前のようだが、非常に重要な指摘だと思う。
取り上げられている映画は誰もが見ているか、見ようと思えば手に入れて見ることのできるものばかりだ。そうした映画をおもしろかった、つまらなかった、の次元とは違うところで分析している。取り上げられている主な作品には「エイリアン」「大脱走」「北北西に進路をとれ」「ゴーストバスターズ」がある。これらの映画を分析していくと思いがけない隠されていたものが次から次に現れる。考えすぎだ、こじつけだ、と思うほどだが、全体を通すとその分析に整合性があり、納得できる。これらの作品はそのような意図を含むことによって繰り返し見ることに耐える作品になっているのだ。見るたびに新しい発見があるはずだ。
たとえば「エイリアン」は「表層的には成功した初めてのフェミニズム映画」で「シガニー・ウィーバーの扮する主人公リプリーは、白馬の王子様の救援を待たずに自力でドラゴンを倒す自立したお姫様」であり「ハリウッド映画が初めて造形に成功したジェンダー・フリーヒロイン」であると見える。その通りなのだが、もう少しよく見ると、実はこの映画は「「体内の蛇」という古代的な恐怖譚の現代的なヴァージョンである」という。確かにこの映画には性的なイメージがちりばめられている。エイリアンの頭部は男性生殖器そのものだ
こうして具体的にシーンごとにその実例を挙げていくうちに表面的に見えていたものと全く逆のメッセージが意図的に埋められていることが分かってくる。ここがこの分析の最もおもしろいところなので是非読んでみてください。
後書きに内田樹先生が「取り上げられた映画をもう一度見たくなるはずだ」とおっしゃっておられる。誠にその通りである。映画を見直し、またこの本を読み返したくなることだろう。

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