五十嵐貴久著「誘拐」(双葉社)
なぜ犯人が突然こんな犯行を思い立ったのか。しかもその誘拐には目的があった。誘拐という犯罪は、実は破綻しやすい。必ず被害者の家族に連絡を取らなければならないこと、そして身代金を受け取るためのコンタクトが必要なこと。だがこの犯人はそのリスクを最小限にする奇手をとる。最も誘拐の難しい総理大臣の孫をなぜあえて選んだのか。ここに秘密があった。
プロローグで耐えられないような悲劇が犯人を襲う。ここにこの事件の発端があるのだが、最後の最後にさらに大きな動機があったことが明らかになる。
鈍感な私だが、珍しくそれにうすうす気がついていた。だが分かっていてもその衝撃は損なわれない。本当におもしろい小説を読ませてもらって作者に感謝する。
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