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2012年1月 4日 (水)

「清末見聞録(清国文明記より)」・貨幣①

Photo 上海・外灘の銀行。

 中国には行って最も不都合で不便だと思うのは、貨幣制度が一定ではないことである。北京でも各種の貨幣が複雑に混ざり合っていてその価値が一定ではなく、慣れない外国人などはみすみす大きな損を被ることになる。何度も当局間の問題となって政府の一両を通貨の基準にしようとする決定もなされたけれど、何の効果もなく旧来のままである。
 銀一両というけれども別に銀一両という硬貨があるわけではない。元宝(ユワンパオ)といって馬蹄形の銀塊、約五両、または十両、時には五十両くらいのものなどがある。これを衡(はかり)で量ってその価値を決める。その衡もいろいろの種類がある。庫平(こへい)、海関平(かいかんへい)、曹平(そうへい)その他市中でだけ通用するものなどがある。他の地方に行くとまたその衡にもまた違いがある。全国に共通する一定の基準というものがない。
 市中に通用している貨幣は今上げた元宝の他、旧メキシコ弗、站人児(チャンレル)、北洋弗、五十銭、二十銭、十銭、五銭などの銀貨、二セント、一セントの銅貨、一厘銭、正金銀行・露清銀行・匯豊(ホイフォン)銀行などの各銀行が発兌(はつだ)する紙幣、中国人経営の各銀号(インパオ)から出している銭票などの数種類がある。これらの貨幣は日々の銀相場、銅相場の変動によって取引されるので、一セント銅貨百枚または十銭銀貨十枚は必ずしも一ドルとは見なされない。銅相場が高いときは九十枚前後で一ドルに替えることが出来る。しかし十銭銀貨はどのような場合も十枚以上あるいは十一枚で一ドルに替えることしか出来ない。そういうわけで、中国には小銀貨はあるけれども、補助貨幣はないと言えるかもしれない。相場は絶えず変動するけれども站人児は小銀貨十一文または銅貨百四文くらい、北洋弗は小銀貨十文と銅貨八銭または銅貨百二文くらい、メキシコ弗は北洋弗より銅貨四文くらい少ない。正金以下の紙幣はメキシコ弗と同じである。(この項つづく)

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