内田樹(たつる)著「狼少年のパラドクス」(朝日新聞出版)
神戸女子大教授(今は名誉教授)である内田樹先生の教育論である。副題は「ウチダ式教育再生論」。論とは何か。読者に新たな視点をもたらすものである。凡百の教育論が誰かの受け売り、すでに知っていることの繰り返しであって、その主張から新たに得るものがないものは論ではない(これも先生の受け売り)。
教育に関心のある人(関心のない人はほとんどいないと思うが)は、この本は必読だと思う。例えば、若者たちの学力が低下しているのはなぜか。文科省が悪いのか、日教組が悪いのか、先生が悪いのか。先生は明快にその理由を説明する。原因が明らかであれば対策も提案することが出来る。提案することは出来るが、実施できるかどうかは危うい。
この社会のパラダイム、というか価値観そのものについて再考を促すような教育論が語られている。人の意見の受け売りを語るメディアの連中にうんざりしている人、新たな視点を獲得したい人は読むべし。
でもこういう本というのは、分かる人はあっと気がついて瞬時に分かるし、分からない人は馬鹿のカベが越えられずに意味がさっぱり分からないだろうなあ(これは自慢しているのではなくて悲しい事実なのだ)。
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