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2012年1月27日 (金)

「清末見聞録(清国文明記より)」・東嶽廟

 泰、華、衡、恒、嵩これを五嶽という(それぞれ泰山、崋山、衡山、恒山、嵩山)。東嶽はその随一で山東省泰山を云う。直隷、山東の各府県は皆その廟を立ててこれを祠る。北京の東嶽廟は朝陽門外にある。元朝延祐(仁宗の時代14世紀初め)の時代に創建され、清康煕帝三十九年重建された。開廟は毎年三月十五日から始まり月末に終わる。特に二十八日は整日といい子女の参詣が多くて人馬が絶え間なく行き交い、すこぶる賑やかである。廟の前面には街を隔てて精巧な牌楼がある。門を入ると正面には昭徳殿、仁聖宮があり、仁聖帝を祀ってある。東西の両回廊には七十二司を祀ってある。七十二司とは道教の神々で、人間界のあらゆる事件、生老病死はもちろん、善悪応報等を司る神々である。わずらわしいのでその神々の名は略す。廟域中には豊碑(いろいろな功徳を讃えた大きな石碑)が林のようにたくさん立っているが、最も有名なものは元の時代の趙子昴(ちょうしごう)の書になる張天師神道碑である。
 信者の間に組織された会が三つある。放生会(ほうじょうえ)、掃塵会(そうじんえ)、白紙会(びゃくしえ)である。放生会は魚や鳥の類を放つもの、掃塵会は廟中の塵を払うもの、白紙会は筆紙墨を献納するものである。放生会と掃塵会は説明しなくとも意味が明らかだが、白紙会については説明を要する。これは神があの世で人鬼を裁判してその功過を記録し、賞罰を明らかにするのに用いるものとして供えるのである。以上の三会はいずれも功徳を施して冥福を祈るものであることは云うまでもない。

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