浅田次郎著「沙高樓奇譚」(文春文庫)
沙高樓(さこうろう)と呼ばれる高層ビルの見晴らしの良い大きなフロアに功成り名遂げた人々が集まって順番にとっておきの話をする。その話は真実でなければならず、誇張や飾りもしないこと、そしてその話を聞いた人間は決して他言をしないことが求められる。
「私」は知り合いの有名な日本刀の鑑定家に誘われてその会に加わる。折しもその日はその鑑定家の話す回であった。
そうしてその話が終わった後、さらに次々にいろいろな不思議な話が語られていく。
どの話も明解な解釈を受け付けないような不思議な話ばかりで余韻が残る。怪談じみている話と言えるのはひとつだけで、恐い話は特にないのでその手の話が苦手な人でも大丈夫。
あらすじを話してしまうとおもしろさを損なうのでここまでとする。
ところで、この会を取り仕切る女装の主人(美輪明宏のイメージ)の話が聞けたら多分一番面白いはずだ。
ストーリーテラー・浅田次郎の面目躍如の本。
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