映画「あしたのジョー」
私はリアルタイムでこの映画の原作になった少年マガジンに連載された漫画を読んだ。力石との死闘とその力石の死、最終回のホセ・メンドーサとの死闘の後の燃え尽きたように真っ白になったジョーの姿とその口元にかすかに浮かんだほほえみ、これはそのまま力石の最期に通ずる。
映画は力石との死闘をクライマックスとしてその後の戦いは描かない。確かに力石との戦いまでが一つの物語で、原作も再び矢吹丈が戦いの場に戻るまでにかなり遠回りさせており、再び丹下ジムに戻ってからは別の話のようになっているので映画の終わりかたはこれで良い。
原作のイメージが鮮烈なので、実写映画は難しいだろうと思っていた。アメリカンコミックなら金をかけて特撮だらけにしてそれらしく作ることが出来るがボクシングは肉体むき出しの生ものだ。
それが原作のイメージを損なうことなくほぼ完璧に再現されていたのに感心した。矢吹丈役の山下智久、力石徹役の伊勢谷友介のふたりの俳優の精進に敬意を表する。あの時代(昭和四十年代)は日本が右肩上がりで経済的に躍進していた。日本中がスクラップアンドビルドの時代だった。その中で日本人が獲得したものと失ったものがある。この物語にはまだ日本人が失う前の熱い思いが込められていたように思う。
若者が明日に向かって努力することに価値を見いだせなくなって、自分探しなどという名の現実逃避を始めたのはいつからだろうか。
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