大沢在昌著「鮫島の貌」(光文社)
優秀なキャリアでありながら事情があって新宿署で警部として単独で現場活動をしている鮫島は、通称「新宿鮫」と呼ばれる。新宿鮫シリーズとしてすでに10冊刊行されているが、外れがなくてどれもすこぶるおもしろい。読んでいない人がいたら是非お勧めする。
この本はその番外編である。番外編というより、デッサンのような短編集といった方がいいかもしれない。それぞれの話は語り手が違う。鮫島の上司であったり、殺し屋だったりする。それが全体として鮫島の姿を浮かびあがらせていく構成になっている。
中に両津勘吉が浅草であのままのキャラクターで出ている話もある。違和感がなくてしかも愉快である。鮫島のキャラクターが際立つとともに両津勘吉に対する著者の温かい視線も見えてくる。
シンプルな話ばかりであるが全体として初めて見えてくるものがある書き方になっている。読みやすいので初めての人はここから入ってもいいかもしれない。
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