山岸俊男著「『しがらみ』を科学する」(ちくまプリマー文庫)
この本の最後の方でこの間読んだばかりの阿部謹也「世間とは何か」が取り上げられている。しがらみを考えていけば世間が出てくるのは当然だが、何かの縁を感じた。また併せて山本七平の「空気の研究」が言及されている。これも日本人を知るための名著だ。
この本は「しがらみ」というキーワードを使った青少年向け社会心理学入門の本である。社会科学や人文科学が科学といえるのかどうか議論が分かれるところであり、私はやや懐疑的な立場に立つものだが、科学自体が最大の宗教みたいになっている現代、科学がつかないと学問として認められないからしようがないのかもしれない。
結論から言うとこの本で「しがらみ」とは何か、青少年に十分理解ができるかどうか疑問である。しかしそれはこの本が読むに値しないということではない。しがらみがそれだけ言葉で説明するのが難しいものだからである。
その難しい問題を何とか伝えようとする言葉の数々の中にこそこの本の値打ちがある。特にピグマリオン効果について書かれている部分は参考になった。ピグマリオン効果についてはこの本を読んでください。もっともおもしろいところなので。
社会心理学の、しかも著者の知る手法からの世界の解釈の一端が示されている。新たな視点獲得のために寄与するものがあった。それだけで読んでよかったと思える本だった。
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