佐々木譲著「廃墟に乞う」
2009年下半期の直木賞受賞作。著者の多くの小説同様これも北海道の警察の物語。主人公はある凄惨な殺人事件がきっかけで、神経衰弱のようになり、休養して療養中の刑事だが、いろいろな人から依頼を受けて地元警察とは別に、いくつかの事件に関わっていくという体裁をとった連作短編小説になっている。
北海道は広い。そして地方は過疎化が進んでいる。その状況こそが事件の引き金になっているような話もある。もちろん捜査を担当しているわけではないので犯人を逮捕したりすることはできないが、部外者であることから見えてくるものというのがある。明快に解決がつくもの、苦い結末に終わるもの、それぞれの余韻をかみしめながら主人公は精神的に再生していく。
人間の哀しさ、弱さをしみじみと伝えながらどこか暖かい小説である。
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