樋口毅宏著「民宿雪国」(祥伝社)
この本の題名から想像する内容はどんなものであろうか。静かな心温まる人情話のようなものを想像したのであれば裏切られる。
この民宿(新潟県の海辺の街にある。寺泊が想定されているようだ)の主人である丹生雄武郎は晩年世界的な画家として評価され、97歳で生涯を閉じる。この本はこの丹生雄武郎の人生とは何であったかを明らかにしたものである。
前半は、彼に関わる重要な人物による大きな事件がいくつか関係者から語られる。読んでいくうちにその展開の意外さに「なんだこれは」と読者は思うだろう。後半はその中で生き延びたルポライター(この物語の全体をまとめた人物)による丹生雄武郎の生誕から死までの時系列に沿った真実の詳伝である。
妊婦と子供と神経の細い人はこの本を読まないことをおすすめする。当たり前の話に飽きた人には刺激が十分ある(ありすぎる)ことを保証する。
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