葉室麟著「蜩の記」
葉室麟はこの「蜩の記」で直木賞を受賞した。直木賞を受賞する前にこの本を買って、いつ読もうか楽しみにしていた。装丁もいいし、久しぶりに本屋で「私を読んで」と呼びかけられた本なのだ。
夜明け前に目が覚めてしまい、ふと手にとって読み始めたら没頭してしまい、気がついたら読み終わっていた。ラストで涙が止まらなかった。
どういうわけかしばらく本に集中できないでいた。二週間くらいだろうか。時々そういうことがあるが今回は長かった。頭の中に、本に集中するためのスペースが必要で、何かでふさがっているとどんなに本が読みたくても受け付けなくなってしまうことがある。昔はそんなことはほとんどなかったのに。ただ不思議にそのような状態を乗り越えた後に、心に残るいい本に巡り会うことができる。
人がまっすぐ生きるということはどういうことだったのか、幕末や明治時代に日本を訪れた海外の人が日本人に対してなぜ一目置いたのか、何を今の日本人は失ってしまったのか。
いや、日本人が、などという考え方がそもそも違うのだろう。他人はどうであれ、覚悟を以て自分の正しいと思う生き方を貫けばいいのだ。そのようにして生きれば日々が楽しくないはずがないことを改めてこの本は教えてくれた。
人は誰かにかけがえがない人だと思われているというそのことでその人のために死ねる。
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「蜩ノ記』がラジオドラマで放送されます。NHKFM青春アドベンチャー6月18日から全10話です。
投稿: 今井 | 2012年6月13日 (水) 22時27分