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2012年3月 8日 (木)

「清末見聞録(清国文明記より)」・山東紀行・白河

 天津に行き、旅装を整えて、牧野田学士に送られて、大阪商船の大智丸に便乗して天津を出発したのは明治三十九年九月四日であった。白河(はくが)の幅はほぼ隅田川の半分ほどに過ぎない。紫竹林の大厦高楼も高粱に隠れ、舟は両岸の緑の間を下る。この川は九十九曲あって百に一つ欠けているから白河と名付けられたのだという俗説があるほどで、これでもかといわんばかりに意地になって曲がっているようである。その間を巧みに縫っていくうちに、同船の人たちがあそこがもっとも困難なところだと指さすのを見ると、いかにも川は急に八十度ばかりの鋭角をなして曲がっている。その前岸には幾カ所も船首をぶつけた跡がありありと残っている。ここも首尾良く通過して六時間あまりを費やしてようやく河口に到着し、潮の満ちるのを待って渤海湾に浮かび出た。海水は白河と同じく煉瓦色であるが、窮屈な北京城内に蟄居していた身には久々でこの渺々とした大海を見るだけで気も心も伸び伸びとする。今夜は待ち望んだ明月に向かい、独り甲板上で吟嘨(ぎんしょう)し、はるかに祖国の天を眺めた。

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