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2012年3月11日 (日)

「清末見聞録(清国文明記より)」・山東紀行・青島

 小幡領事の紹介状を携え、当地の草分けの一人今村君を訪ねた。談笑中に同じ提督号に便乗した東京商業会議所の前田氏も来られたので、相共に今村君の案内で馬車を駆って青島全部を残らず見物した。
 今村君の談話によって青島の大要を述べればこうである。ドイツが一宣教師の被害を口実として、突然膠州湾を占領して無理矢理にこの地を租借してから、まだ数年にしかならないが、金を費やすことすでに十二億マルク、第一に着手したのが道路・水道・下水道で、これが完成すると漸次その他に及び、大小二個の港には桟橋が三つあり、一万トン以上の船を入れることのできる浮きドックもある。砲台を設け兵営を置き、山東の省城済南(チーナン)に至るまで鉄道を通し、総督府、裁判所、警察署、ホテル及び市街の建築物は美観を極め、娯楽のためには競馬場、劇場及び海水浴場などもあり、伝統、電話はもちろん、ドイツ人につきもののビール醸造場や病院、寺院等、一切の設備が整っている。さすがに山東におけるドイツの策源地としてその力を尽くしている跡を歴々としてみることができる。現在は山東は石炭が出るけれども、貨物に乏しく貿易はふるわず、それなのにドイツがかくの如く不生産的事業に巨額の金を投じて惜しまないことから、志が決して小さくないことが分かる。我らは深くこれに着眼しなければならない。
*このあとの第一次世界大戦でドイツは敗戦国となり、青島は戦勝国となった日本に奪われてしまう。現在の青島は韓国企業の進出が最も多く、韓国人が多い。

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