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2012年7月15日 (日)

「清末見聞録(清国文明記より)」・長安紀行・滎陽

 鄭州は汜水から百十里、この日に必ず鄭州に着こうと思い、十月二十六日、半夜に起床、午前三時に出発した。雲間から洩れる月明かりを頼りに二、三の村を通り過ぎて三十里ほどで史村集に到る頃に空が明けてきた。烙餅(鉄板の上で焼いた餅)を朝食の代わりに食べて、さらに十里ほど行くと午前八時に滎陽に到着し、西関を入る。町の両側には外国雑貨の店が軒を並べ、市場の賑わいはまれに見るものがある。
 漢・楚が天下を争っていたとき、漢王はこの地にあって楚軍の重囲を受けたが、紀信が身を以て漢王に代わり、漢王はわずかにその身を逃れることが出来た。今滎陽の東関内路の北に紀信廟があるという。桑原君も私も共に注意を怠らなかったつもりだがついに見落とした。これより須水(しゅすい)、三官廟の諸鎮を過ぎ、五時四十分鄭州に到着、停車場の前の普利享店に宿泊した。
 九月三日に北京を出発してからすでに五十四日、汽車に乗ったところは別として皇帝およそ二千五百里、あるいは川を渡り山を登り、また険しい坂を越え、その間には馬車が泥濘に転覆し、あるいは夜、風雨を冒して危ないところを通ったりしたけれども、桑原君が一時病に苦しんだほかは一行三人ともに大事なく、一路平安に鄭州に到着することが出来た。三人互いに見合って喜び合った。

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