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2012年7月29日 (日)

中国ウオッチ・南通のデモ

 王子製紙の排水処理計画に反対する江蘇省南通市の市民のデモは一時一万人を越え、一部が暴徒化して市庁舎になだれ込む騒ぎになったが、南通市側が計画を全面的に中止すると表明したことで収束した。
 
 集まった群衆はほとんど引き揚げたが、一部の興奮した集団が居残り、それに対して武装警官が大量に導入され、抵抗するものを次々に強制排除した。その時の様子を撮影していた朝日新聞の上海支局長が警官に取り囲まれて暴行を受け、カメラと記者証を没収されたという。

 十年くらい前のことで、しかも又聞きだが、南通の工業団地を訪れた際、進出した企業の一番の難問が排水処理の問題なのだと聞いた。南通では各企業が勝手に排水処理設備を設けて排水することが出来ず、工業団地内に何カ所かある共通の大きなピット(何千トンとか何万トンとか)に排水を溜め、それを処理するシステムになっているという。そのピットとの距離、使用の優先権など、難しい交渉が必要で、それが企業の死命を制するくらいだということであった。

 ここで感じたのは同業の会社がおなじピットに排水を溜めているのならその処理も容易だが、極端な異業種だと排水の質が著しく違い、処理が困難だったり問題があったときのその責任の所在も曖昧になりかねないということだった。そしてそのピットの能力は工業団地に誘致される予定の企業全体に対して明らかに不足しているということだった。 

 今回は製紙会社の排水の問題である。製紙会社はどの工場よりも排水量が多い。多分南通市は王子製紙を誘致するにあたり、現状の方式では処理が出来ないことを承知しているので王子製紙側が排水処理の設備を設け、市がその排水を海へ流すという方式をとろうとしたのだろう。
 
 ところが他の企業は排水をそのままピットに流していることから王子製紙も排水をそのまま海に流す、と思われたのではないだろうか。実は南通では金属処理の工場が汚染排水の元凶として住民運動により、操業停止に追い込まれている。金属処理工場は排水量は少ないものの処理の難しいかなり毒性の高い排水を出す。多分ピットで処理しきれなかったものが河川に流れ、遡ってその工場が犯人としてやり玉に挙がったのであろう。

 このように正しく住民が認識すれば今回のような騒動は起きないのだろうが、そもそも中国では日本以上に行政や企業を信用していない。ことここに到っては住民は一切貸す耳を持たないだろうから、王子製紙はしばらくは静観するしか手はないだろう。

 ところで朝日新聞も腹は立つだろうが、あまりエキサイトして騒いでこの問題を反日に結びつけられるようなことのないようにして貰いたいと願う。

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