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2012年7月13日 (金)

「清末見聞録(清国文明記より)」・長安紀行・虎牢関①

 十月二十五日午前六時に鞏を出発した。馬はやせ馬で、鞏を出てまもなく馬車が泥濘にはまり車軸が折れてしまった。急使を飛ばして衙門に馬車の換えを依頼した。一時間ほど待っていると馬車が来た。東関外は洛口に浜して帆船がたくさん川岸に停泊している。賑やかな関を出てすぐに急峻な坂道となり、貨物を載せた大きな車が十余輛皆上がることが出来ずに立ち往生している。しばらく待っているうちにようやくその車が動き、こちらも一頭馬を添えて坂を越えようとしたがこちらの馬車も前へ進まない。手を尽くしてようやく九時半頃になって坂を登ることができた。ここから一帯は高原になっていて道はうってかわって平坦である。十余里ほど行ったところでまた坂道になった。これを登り切ると峠には数軒の飲食店がある。鳳翅城嶺(ほうしじょうれい)と云う。嶺上に行宮がある。庚子の変のときに皇帝が西安に蒙塵されて、のち還幸の際に設けられたものである。行宮はこれより以西、長安に到るまで駅站各処にあるけれども、この地のものが最も風致(おもむき、おもしろみ)に富んでいる。崇山の山脈、東に延びてその南を包み、北は大河を足下に望んで、屏風のような太行山に対し、河南の高原が眼前に一幅の絵のようで、西は洛水が東へ流れ、はるかに洛陽を指している。千里一望、気宇闊大な気分を覚える。

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