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2012年7月15日 (日)

ジャック・ケッチャム著「ロード・キル」(扶桑社ミステリー)

 翻訳・有沢善樹。ちょっと古い本です(1996年出版)。
 スティーヴン・キング絶賛と帯にある。アメリカミステリー得意の(今では日本もだが)サイコキラーものである。

 知性も美貌も資産もある女性が幸せな結婚をした、と思ったら相手は結婚後突然暴力亭主に変貌する。何度かの傷害を受けた後ついに離婚にいたり、ようやく彼女は新しい恋人も出来て悪夢から立ち直りつつある。亭主も警察から彼女の近くに立ち寄らないことを強く警告されている。ところがその亭主は怒りが収まらず、再び彼女の周辺に出没し、傍若無人に振る舞いだし、彼女は再び身の危険を感じて・・・と云うのが話の立ち上がりの部分である。このような小説はいろいろある。ここで彼女は逃げようとするが、亭主の執拗な追跡の果てに・・・とか、彼女が新しい恋人と亭主に立ち向かって・・・と云うのがおきまりだろう。

 この物語はその定番中の定番で、恋人と二人で亭主を誘い出し、殺害をもくろむのである。亭主の強烈な反撃に遭い危ういことになるものの何とか二人は亭主の殺害に成功する。ここからがこの本の本題である。この殺人の一部始終を目撃していた男がいたのだ。この男が物語の主人公であり、サイコキラーである。いや、この男は妄想の中で人を殺すことを夢見ていたが、実際には人を殺したことなど無い。だがこの殺人現場を目撃したことで彼の妄想に火が付いてしまう。

 自分たちの犯した罪におびえる二人のもとを訪れた彼は、二人を脅して自分の車に乗せ、ドライブに出発する。彼に云わせれば、二人を自分の犯罪の目撃者にするための同行なのだ。彼は自分のメモ帳に様々な人間の罪を書き連ねており、有罪と自分が断罪した人間を突然何のためらいもなく次々に殺害していく。

 警察の包囲網は迫り、連れ回されている二人もチャンスを捕らえてついには反撃に出るのだが・・・。

 この奇妙な殺人者の造形にリアリティがあるところがこの小説の真骨頂で、スティーブン・キングもそれを評価したのだろう。この犯人の感性は移りそうなので気をつけた方がいい。凄惨な殺人描写がドライに語られているのに後味が意外と悪くない。

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