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2012年7月28日 (土)

中国ウオッチ・暴動

 王子製紙が中国の南通市の開発区に建設中の製紙工場の排水処理計画に対し、地元の反対運動が激化、多くの住民が市庁舎に暴徒化して押しかけ、入り口を破って庁舎内で抗議活動を行って書類などを庁舎ビルの窓からばらまいたりした。市当局は最終的に市民側の要求を全面的に呑むことを了承、排水処理工事を全面的に中止すると発表した。

 暴徒側の言い分は排水で中国人を毒殺しようとしている、というものだが、王子製紙側は排水は完全に浄化されて安全なものだと主張している。この工場排水は南通から海まで100Kmのパイプラインで流されるので南通市の上水も下水も汚染されることはないはずなのだが、住民側はまったく信用していないようだ。

 最近中国では住民が集団で押しかけて当局に要求を呑ませることに成功しているケースが続いており、南通では金属処理の工場建設を阻止したばかりなので盛り上がっているようだ。

 こうなると理屈は関係なくなり、どんなに説明しても聞く耳を持たなくなっており、当分の間は王子製紙はあきらめざるを得ないのではないだろうか。いきさつを見ていると、一部反日的なプロパガンダは見られるものの特に日系企業を意図的にターゲットにしたというわけではないように見える。だからここから尖閣と絡めて反日運動がさらに激化すると言うことはないと思うが、しばらくは予断を許さないだろう。

 中国政府も従来ならこのようなときは強権を持って暴徒を蹴散らすのだが、今はこのような盛り上がりが反政府活動につながらないために仕方なく活動を見守り、言い分を認めざるを得ないようだ。だがこんなことが続くと何事も住民活動で言い分がとおるという前例を作ることになってしまいかねない。まして外国企業が企業活動しにくい状況は、地元政府にとっても中国政府にとっても極めて許しがたいことのはずで、時間をおいてほとぼりが冷めてからの当局の締め付けがあるのではないかと懸念される。

 ちなみに南通市は揚子江に面した街で、上海にも南京にも近く、海外企業を誘致して大発展をしている。日系の大手企業もたくさん進出しているところであり、私もいくつか工場を廻ったが、大きな工業団地がいくつもつくられていた。当時は揚子江をフェリーで渡ったが、今は橋が架かって高速も通じてとても便利な街になっている。それらの企業は今後の成り行きをとても心配していることであろう。

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