中国の海洋監視船三隻(当初二隻と伝えられていたが三隻のようである)が尖閣諸島に接近し、領海内に侵入強行の気配を見せている。
尖閣領域に対して、前々回は漁船、前回は香港の活動家たちがチャーターした漁船、とそれぞれ民間の船が行った違法行動であったが、今回の海洋監視船は中国の公的船舶である。今回の恫喝的行動は明らかに中国の今までの行動とはレベルが違うものであり、もし領海侵犯や尖閣上陸などが強行された場合の対応には相応の覚悟が必要となる。
なぜ中国がこのようなレベルアップした行動に出たのか。昨日もこの件について言及したが、私は今回の日本政府の行動が中国政府のメンツをつぶしたからだと思う。
靖国参拝問題での中国の過剰な反応について異常さを感じるであろうが、中国のいっていることとリアクションをよく見聞きしているとその理屈は解釈することが出来る。
先の日中戦争は日本軍部の独走により引き起こされたもので、中国は被害を受けたが日本国民もその犠牲者である、と云う建前で、中国は賠償を放棄した。だからA級戦犯こそが戦争の犯人であり、許すベからざるものとして断罪することで戦後の日本を敵国としなかった。ところがそのA級戦犯を靖国神社に合祀し、あろうことか国の代表が参拝する、となるとその建て前を日本が崩したことになる。このことは日本的感覚では理解の外だが、彼らの論理はそれにのっとっており、それを侵した場合、激しく抗議してくる。
今回の尖閣問題はもちろん中国の一方的な「尖閣諸島は中国の領土である」という主張が問題そのものなのだが、だがその主張が理不尽なことは中国政府は百も承知である。だが一念岩をも貫く、と信じる国である。言い続け、隙を突き、既成事実を積み上げていつかはその主張を達成する意志を持っている。
しかし中国も国際的に明らかに違法なことをして通用するなどとは考えていない。だから民間をあおり立ててその行動は中国政府とは無関係である、と云う姿勢を取りながら、もしその民間の違法行動に対して言いがかりがつけられるような行動を日本がとった場合にはその民間人の保護、と云う名目で国家として行動しようと手ぐすね引いているのだ。このことは私が言わなくても皆そう感じていることだろう。
今回の香港の活動家の違法上陸に対しての対応はおおむねあれしかないだろうという対応だったから中国も何も言いがかりがつけられなかった。ここで日本は中国に対して厳重抗議し、次に同様な行動があった場合はもう一段厳しい措置をとる、と宣言するチャンスだった。
中国が何か行動を起こすたびにそれに対抗することで一歩日本が前進する、と云うことを繰り返すことで、中国が次の手を打ちにくくするという迂遠な方法が最も有効な方法だった。
しびれを切らして石原東京都知事が東京都で購入する、と云う奇策を打ち出したことは中国としては言いがかりのチャンスとみただろう。だがその最中に香港の船が違法上陸してしまった。中国政府の本音としてはいらぬことをしてくれた、というところであろう。反日運動がこのことで盛り上がったことも中国政府には不都合なことであった。反日はそのまま反政府に転じる可能性を孕んでいるからだ。
だから中国政府は反日行動も含めて尖閣については一時静観の態度に転じた。まして政府のトップ交代の時期を目前にして強引なことは控えようとも考えただろう。また、東京都が購入する、と云うのは中国政府にとっては石原慎太郎の個人の行動ととらえている。石原慎太郎個人を攻撃しても尖閣が有利になるチャンスはない。
ところが何をとち狂ったのか野田政権は国家として尖閣購入をそれもこそこそと決めてしまった。ウラジオストックのAPECで胡錦濤に対して手柄顔に「これで東京都が勝手に出来なくなって安心ですよ」に話したことであろう。これを胡錦濤への土産としていいたくて急いで購入を決めたのかも知れない。
これは強硬論のある軍部などをなだめて当面静観を決めたばかりの胡錦濤にとってメンツのつぶされる話だった。靖国問題と同じように、石原慎太郎の問題、としてとりあえずの幕引きをしようとしていたのに日本国の問題に持ち上げてしまった。
胡錦濤の状勢判断ミスが中国政府内では指弾されているであろう。そうなれば胡錦濤もことさらにエスカレートした行動を取らざるを得ない。しかも大義名分は日本政府がもたらしてくれた。今回は国家として中国を挑発したのである。
今回の海洋監視船はそのような背景を元に派遣されている。それに対してどのような覚悟があるのか。
中国は、今回は日本の責任である、と主張している。責任者である野田首相はどう責任を取るのか。野田首相は収まりそうだった中国政府が突然強行になった理由が理解できていないであろう。外交音痴なのである。ロシアに対してもかなり神経を逆なでする失言をしていることは外交官僚から泣き言として洩れている。本来外務省からレクチャーがあるのだろうが、どうも聞く耳を持たないようだ。
尖閣諸島を突然国家が買い上げることで解決を図ろうとしたやり方の中に、独断専行して状況判断を誤ると云う、人間として資質を疑う行動を見ると、これは民主党という党の宿痾であって、野田佳彦という人間の限界かも知れない。
中国が何処までやるつもりなのか、しばらく注視していきたい。
中国みたいに一方的に意見を書き付けてすみません。筆が走って止まらなくなってしまいました。
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