ジュネーブで開かれた国連人権理事会で中国の代表は「中国政府は、少数民族の権益保護を重視し、社会、経済、文化、宗教などへの平等な参加を確保している」と語った。更に「少数民族が自治する地域の経済、社会の発展を促進するため、雇用拡大と貧困解消プロジェクトの実施に重点を置くと同時に民族文化の特殊性を重視し、支援体制を構築した。少数民族自治地区の義務教育の普及率は100%であり、法に基づいて宗教の活動の場を保護している」と説明した。
中国には55の少数民族がいると云われる。そして中華人民共和国建国の時には、全ての民族の代表も参加して発足した。
しかし建前はそうであっても現実には漢民族が優先された政策が施行され、少数民族が暮らす地域に漢民族が意図的に大挙して移住し、経済活動の主導権を握っている。
中国では一人っ子政策という人類史上誰も行ったことのない政策を実施してきたが、少数民族についてはこの政策は適用されない。それなら少数民族の出生率は漢民族よりも多いはずなのだが、不思議なことに漢民族の方が出生率が高く、少数民族は軒並み減少しているのが事実である。
雲南省は少数民族が数多く暮らしている地区である。そこには民族村として観光地化した場所が幾つもある。北海道のアイヌ村の大がかりなものだと云ったらいいだろうか。そこで少数民族の暮らしを見せている人たちが沢山いる。その人達はあちこちから集められてきた少数民族の人たちである。
アイヌ村と云うよりもアメリカでのインディアン居留地と云った方が良かっただろうか。そこで見たものは私の偏見もあるのかも知れないが、恥ずかしそうに、そして嫌々少数民族の暮らしや踊りを見せている人たちの暗い眼だった。
復旦大学と云えば中国の名門である。復旦大学の歴史学の教授が、韓国を訪問し、講演し「中国文化は本来単一の民族の文化ではなく、モンゴルや満州人の征服王朝の時代を経て、交雑と変化を重ねてきたものだ。中国文化は多様性に富んだものだったが、近年は漢民族を重視した愛国主義が強調されすぎている。」と述べた。
韓国では満州地区に朝鮮族が多い事から、そもそも中国文化の一翼を朝鮮族が担ってきた、と云う主張が盛んである。この教授は意図的に韓国でリップサービスをしたのだろう。
中国が国連人権理事会で主張したこととは異なり、チベットでは宗教が弾圧され、数多くの僧侶が迫害を受けて投獄されている。そして数多くの漢民族がチベットに押しかけ、経済を牛耳り、チベット語使用を禁止し、義務教育も全て中国語のみで行われており、チベット文化の継承をほぼ禁止している。そのような政策に反対して若い人たちの焼身自殺が後を絶たない。集会を厳しく禁止されているので抗議活動は焼身自殺くらいしか出来ないと云う恐ろしい状況なのだ。
中国が少数民族を尊重している、とあちこちで強調している、と云うことは実は少数民族が迫害されている、と云う国際的非難に対する言い訳なのだ。だがこの言い訳は中国にとっては正義の名のもとの信念に基づいてのものであり、嘘をついているつもりも間違っているという意識も全くないことを認識しなければならない。自覚のない所に改善はあり得ないのだ。中国の闇は深い。
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