映画「あぜ道のダンディ」2011年日本映画
監督・石井裕也、出演・光石研、田口トモロヲ、西田尚美、森岡龍、吉永淳。
学歴もなく、妻にも先立たれて男手一つで浪人中の息子と高校三年生の娘を育てている宮田(光石研)と云う男が主人公である。彼には、男はこうでなければならない、と云う強い思いがある。その思いに反して子供達には口もきいてもらえず、二人の子供がどこを受験するのかすら知らない。
彼は運送会社に勤めているが、無口で人と打ち解けず、最近はあまりの無愛想さに孤立している状態だ。唯一の親友の真田(田口トモロヲ)と飲んでも些細なことに突っかかり、突然怒りを爆発させたりする。
どう見ても彼の理想とするダンディとはほど遠い、人に一目置かれるような男などでは決して無い、いやなやつだ。だがそれは彼にある屈託があることから来るものであることがやがて分かってくる。
最近彼は胃痛に苦しんでおり、酒以外の食べ物を胃が受け付けなくなっているのだ。若死にした妻の様子に酷似している症状に、自分が胃がんであることを確信せざるを得ない。
病院へ行って検査を受け、死への準備を始めた彼は、後を真田に託す。
その真田は長いこと寝たきりだった父親の介護に疲れた妻に逃げられ、父の面倒を見るために職を失い、その父親の死をようやく看取ったところである。幸い死んだ父親にいささかの資産があり、今はたった一人になったが、働かなくでも食べていける。気持ちの支えは親友の宮田なのだ。宮田はこの親友を見下しているように見える。でも友だち通しの間柄は二人の間で了解していればそれで良いのだと云う事を、映画を見ている内に改めて納得させられる。
姿形はともかく、自分もダンディでありたいと思う男の一人として、この宮田という男は見ていて好きになれない。その好きになれない宮田のもがきを延々と見せられているうちに、子ども達二人と同様、この男を何時の間にか仕方なく受け入れている。
この映画は120分ほどだが、私は90分くらいのところのクライマックスで終わった方が好いと思う。もちろん宮田がいやな奴のままで終わってしまうがそれで良いのだと思う。どうだろう。
蛇足だが、死んだ妻の役の西田尚美は好きな女優だ。
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